播州黒田庄の白山から妙見山の縦走コースは、明るい尾根からの展望の良さで人気があり、“ふるさと兵庫100山”にも選ばれたり、山雑誌にも取り上げられたりで、
以前から興味を持っていた。それをうまくオープン山行に充てることができた。

　今回の体験参加の方々は、府岳連登山学校の読図講習の機会を捉まえて、少々厚かましく配らせてもらったチラシを見て来ていただいた方々である。幸いにも予想以上
にたくさんの方に興味をもっていただいて車一台分の定員を越えてしまい、御二方に涙を飲んでお断りの連絡をせざるを得なかったという状況だった。嬉しい悲鳴と言う
しかない。

　鮨詰め状態の車を走らせ篠山市を通過すると、この日開催される“車いすマラソン”の為、後20分程で市内が交通規制されるところだった事を知り、際どいタイミン
グにラッキーッと喜んだ。О氏のポータブルカーナビで円滑に黒田庄隣保館に着く。

　スタート地点の大歳神社の参道にはたくさんのシバグリが落ちていて、生で食べてもマカダミアナッツのような風味がある事を初めて知る。そしてこれは、この山行を
秋色に染める最初のひと筆であった。神社横から山道に入ると、白山までの距離がご丁寧に100ｍ毎に示されている札に導かれる。すぐに左右どちら側にも視界が開ける
尾根に出る。沿道にはヤマハギの行列。

　南山を北側から巻いて進むとどんどん札の数字が減って来て、露岩部分を詰め上がると白山に着いた。頂上は溶結凝灰岩という岩が占領していて、眺望が素晴らしい。
南の彼方の山の間に頭をもたげる二本の柱が、明石海峡大橋だと判明した。天気にも恵まれたが、低いながらも爽快感に溢れる頂上でのひと時だった。

　後ろ髪を引かれながら白山を後にし、樹林帯の小さなアップダウンを消化して行く。時々コルで出逢う風が心地よい。十字路で短めの昼休憩を摂り、妙見山の周遊
コースへと踏み出す。村中集落への分岐、真新しい妙見堂を通り、草が生い茂り踏み跡も眺めも薄くなったまばおに達する。踏み跡を探していると、頭上にミツバアケビ
を発見。野生動物と化して実を食し、その甘さに唸った。

　妙見山は木立に囲まれて眺望はなかったが、三角点標石にもたれかかる小さな鳥居に手を合わす。そして十字路からたわへの下りに、またミツバアケビと遭遇。一旦味
を占めた野生動物は欲深く執拗で、工夫と努力を重ねてまた熟れた果実をゲット。秋色はここで最も濃厚となった。

　下りはたわから谷沿いの黒田コースを取る。ここでの見物は、斜面から滝のように垂れ下がるヤマハギで、それが延々と続きまるで花の飛沫を浴びているかのようだっ
た。家々の庭の柿も赤くなった黒田の集落を抜け、蓬莱峠を越えて前坂に戻って来ると、人家から道路にあふれ出たナツメの木があり、ちょっとその実を失敬して味わっ
た。御免なさい。

　この日は気温が高く、皆それぞれがよく汗をかいた。その汗を流そうと、目を付けていた風呂(へその湯)を目指すと、何と閉鎖されていてこれはアンラッキー。

行ってみて、その時々の自然条件に接するのがまた山歩きの楽しいところ。それは山岳会会員であってもなくても同じ。一つの山行でメンバーの各々が、知恵や知識を
披露すれば、自然の遊びも少しは豊かになろうかというもの。

　体験参加者の皆さん、ゼニーツとの行動は如何だったでしょうか。

◎ 途中で拾った、最初サワグルミではないかと思った実は　ムベ　では？

◎ 途中、全員が思わず見とれた美しい蝶は　アサギマダラ　では？

◎ 途中、私が食べてリンゴの味がすると言った小さい赤い実は　ウラジロノキ　の
実では？

◎ ナツメの実は甘く、漢方薬を飲み易くする為の味付けにも使われるらしい。イン
ディ・ジョーンズも映画の中で食べている。

◎ 黒田庄は、来年のＮＨＫ大河ドラマの主人公　黒田官兵衛(如水)　の生誕地。来
年は賑やかになりそう。

　　　　　　（　雅　記　）